頚椎症（頚椎症性脊髄症）の治療・手術

【脊柱管拡大術】

頚椎症性脊髄症の手術は、頚の前方から行う方法と、後ろから行う方法があります。

①　脊柱管が狭い患者さんの場合は、基本的に後ろからアプローチし、後方から脊髄の圧迫を除圧する方法をとります。

この際、広がった椎弓を安定させるため、人工骨を使用します。

手術後早期に離床し、リハビリを開始できるため、ご高齢の方は第１選択となります。

②　脊柱管が狭い方でも、変性した椎間板や骨棘が前方から脊髄を高度に圧迫している症例であれば前方法を選びます。

手術は、頚椎症性神経根症の手術と同様、膨隆した椎間板や骨棘の突出を除去します。

頚椎症性脊髄症では2か所、3か所と圧迫部位が複数にわたることも多いため、複数の椎間板を除去することもあります。

すると必然的に骨の欠損部位は大きくなります。

頚椎の固定のために腸骨（骨盤の骨）を採取し、空洞となっている部分に骨移植する必要があります。

頚椎症性神経根症の手術では人工骨の使用もしますが、上述のように骨移植の範囲が大きい場合は、骨癒合しやすいよう全て自家腸骨を使用します。

※人工骨は自家骨に比べて骨癒合は不利です。

脊柱管拡大術に伴う合併症は、指や脚は動きやすくなったものの、一時的に肩のみが上がらなくなるというものがあります。（頚椎5番から出ている神経の一時的な麻痺）

頻度は全体のうち約5～10％であり、症状は半年ほどで回復します。

後方からアプローチする場合は、頚の後ろ側の筋肉を剥離するため、手術前の痛みとは異なる軽度の首の痛みやこりが現れることがあります。

時間と共に軽減しますが、軽度の頚部痛は持続することもあります。

軽度の頚部痛も手術法の改善により、近年では減少しています。

頸の可動域がやや制限されることがあります。

脊柱管拡大術の長期成績は良好で、術後10年、20年といった長期間安定しています。